行政書士 谷垣事務所 代表 谷垣 征和
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障がい福祉事業の一つに「生活介護サービス」があります。
これは、地域や施設においての安定した生活を図るため、常に介護を必要とする障がい者を対象に、主に昼間の時間帯、障がい者支援施設等で、入浴、排せつ、食事の介護、創作的な活動などの機会を提供することを目的としたサービスです。
今回は、そうした「生活介護サービス」を営もうとする場合の開業の仕方について書いていきます。
人員配置の基準
「生活介護サービス」を開業にあたって、必ず置かなければならないと決められている人員配置の基準があります。
1管理者
職員や業務の管理や、職員に規則等の順守をさせるといった、事業所の業務全体の指揮管理を行います。
この管理者になる場合の要件には、次のようなものがあります。
管理者の要件
①社会福祉主事資格要件に該当する者(例)社会福祉士、精神保健福祉士
②社会福祉事業に2年以上従事した経験のある者
③社会福祉施設長認定講習会(※)を修了した者
(※)③の「社会福祉施設長認定講習会」とは、①、②に該当しない人が、資格要件を得るための講習会です。「全国社会福祉協議会中央福祉学院」が実施しています。
1年を4学期に分け、それぞれの学期ごとに4科目の履修をします。その後、課題に取り組み答案を郵送して60点以上であれば、その科目は合格となります。4科目×4学期=16科目を合格し、設定された連続5日間のスクーリングを受けることで、修了証書が与えられます。
権利者の兼務が許される場合
管理者は、事務所の管理業務に従事することになりますが、利用者の支援に支障のない場合には、事務所の他の職務か他の事業所の職務のいずれか一方を兼務しても良いことになっています。
2サービス管理責任者
サービス管理責任者は、次のような業務をおこないます。
サービス責任者の業務
- 利用者のニーズ等を調査し、利用者の自立支援のための検討を加えながら、自立支援計画を作成する
- よりよい個別支援計画を作成するための会議を開催し、意見を取りまとめる
- 作成した個別支援計画の利用者への交付
- 個別支援計画の改善と見直し(6か月に1回以上)
- 利用者の心身の健康状況、他の福祉サービスの利用状況の把握
- 利用者の自立生活に向けての検討と必要な支援
- 他の従業者への技術指導や助言
資格要件
サービス管理責任者になるためには、次のどちらもを満たす必要があります。
- 障がい者の保険、医療、福祉、就労、教育の分野での直接支援や相談支援の業務経験が3年~8年以上の者(詳しくは、自治体ごとに定められています)
- サービス責任者等基礎研修、相談支援従事者初任者研修終了後、実践研修受講開始前5年のうち、通算2年以上の実務を経験し、サービス管理責任者等実践研修を修了している者
配置数
サービス管理責任者を何人置かなければならないかは、利用者の人数に応じて決められています。
- 利用者が60人以下の場合→1人
- 利用者が61人以上→1人に40人増えるごとに1を加えた数
勤務形態
常勤専従が1人以上必要ですが、利用者の支援に支障がなければ、管理者との兼務は可能です。
3生活支援員
サービス責任者の作成する個別支援計画に基づいて、利用者の日常生活全般の支援を行います。1人以上の人員が必要ですが、1人の以上は常勤である必要があります。専ら事業所に従事することになっていますが、常勤の生活支援員以外は、利用者の支援に支障がない場合、この限りではありません。
4医師
利用者が日常生活を送る上での健康管理や療養上の指導に必要な人数が必要です。専ら事業所に従事することになっていますが、利用者の支援に支障がない場合は、この限りではありません。
5看護職員
看護職員の例としては、保健師、看護師、准看護師などが挙げられます。1名以上が必要です。
専ら事業所に従事することになっていますが、利用者の支援に支障がない場合は、この限りではありません。
6理学療法士または作業療法士
日常生活に必要な機能の低下を防止するための訓練を行う場合は、必要数を置きます。
また、理学療法士、作業療法士の代わりに看護師、柔道整復師、あん摩マッサージ指圧師、言語聴覚士を置くこともできます。
この場合も、専ら事業所に従事することになっていますが、利用者の支援に支障がない場合は、この限りではありません。
総人員数における決まり
上記、医師、看護師、理学療法士または作業療法士の総人員数については、平均障害支援区分によって、細かく定められています。
例えば、平均障害支援区分(※1)が4未満の場合、常勤換算方法(※2)で利用者数を6で割った数以上の人員を置くことになっています。
(※1)平均障害支援区分・・・利用者の障害支援区分を元に計算するもので次のような計算式で求めます。(②は「障害支援区分2」に該当する人の数を指します)
平均障害支援区分=(2×②+3③+4×④+5×⑤+6×⑥)÷全利用者数
(※2)常勤換算方法・・・従業者の労働時間をすべて足し、フルタイムの労働時間で割って計算する方法
設備基準
生活介護サービスをおこなうための事業所には、必ず設置しなければならない設備があります。
次のようなものがそれにあたります。
必ず備える設備
①訓練・作業室
利用者へのサービスの提供に支障のない広さのもの(有効面積で3㎡/人)で、かつ訓練生産活動に必要な、器具や備品を備えていること
②相談室
談話が外に漏れることのないような構造を備えられていること
③洗面所
利用者が利用しやすい構造を備えたもの
④トイレ
利用者が利用しやすい構造を備えたもの
⑤多目的室
有効面積で10㎡/人の面積を有すること。利用者の支援に支障がない場合、相談室と兼ねることができる
⑥その他事業の運営に必要な設備
設備に関するその他の決まり
- 利用者の特性を勘案して設置されたもので、かつ日照、採光、換気、健康面への配慮、防災に対する配慮がなされたものであること
- 事務所については、置かなくてもよいが、設置する場合は鍵付き書庫を置くなどすることで、個人情報の管理をおこなう
- 事業所の設備は、基本的には事業をおこなうために使用する(利用者の支援に支障がない場合を除く)
- 床面積については、サービスの質を維持するためにも必要最小限のものにする
共生型サービスの指定
「地域包括ケアシステムの強化のための介護保険法等の一部を改正する法律」によって、高齢者と障がい児者が同一の事業所でサービスが受けられる事業所「共生型サービス」の設置が認められることになりました。
この「共生型サービス」の設置基準は、介護保険法による介護福祉事業所と身体障害者福祉法による障がい福祉事業所の両方の施設の要件を満たす必要がありますが、どちらかの指定を既に受けている場合、もう一方の指定も受けやすくなるという緩和措置があります。
提出する書類についても省略できる書類がありますので、以下の申請書類等の項目でまとめて示します。
基準該当事業所
指定事業所としての指定を受けるには、人的要件、設備要件、運営要件などの一部が基準に満たない場合でも、「基準該当事業所」としての運営が認められる場合があります。
地域によって、必要とされるサービスを提供する事業所がない場合等に、一定の基準を満たしていなくても、そのサービスができるようにした制度です。
多様な事業者の参入を可能にすることによって、地域におけるきめ細やかなサービスが提供されるようになることが期待されます。
地方公共団体によって独自の基準を定めていることがありますので、確認することが必要です。
申請書類
生活介護サービスを開業する場合に必要な書類は次のとおりです。(※の付いているものは、共生型サービスをおこなう場合は不要)
- 申請書
- 付表
- 法人の登記事項証明書※
- 勤務形態一覧
- 組織体系図
- 経歴書(管理者、サービス責任者)
- 研修修了証の写し(管理者等の要件を満たすために研修を受けた場合)
- 実務経験証明書(管理者で実務経験が資格要件となる場合、サービス責任者)※
- 事業所平面図※
- 居室等面積一覧※
- 設備備品等一覧※
- 事業所の写真(外観、内観)※
- 苦情解決措置の概要※
- 主たる対象者特定の理由(主たる対象者を特定する場合)※
- 誓約書
- 協力医療機関契約内容
- 人権擁護・虐待防止研修報告書
- 運営規定
- 事業計画書
- 収支予算書
- 事業所の使用権原を証する書類※
- 賠償責任保険加入書の写し
- 加算届
- 開始届
- 業務管理体制の整備に関する事項の届出 など
他にも自治体によって、必要な書類がある場合がありますので、確認が必要です。
まとめ
今回は、障がい福祉事業のうち、「生活介護サービス」の申請について書きました。
障がい福祉事業の申請は、申請までの流れや基本的な要件等どの業種にも共通する部分がありますので、それについてはこちらの記事「行政書士がサポート「障がい福祉事業」の始め方~放課後等デイサービスを例に~大阪・神戸」を参考にしてください。
障がい事業をおこなう場合は、まず法人を設立しなければなりません。
当事務所では、税理士、司法書士と連携することで、定款作成はもちろん、税務相談や法人登記もすべてノンストップでおこないます。
また、事業開始後の税務関係の届出や保険関係の書類提出も他士業と連携してフォローしていきます。
神戸・大阪周辺で、生活介護サービス等の障害福祉事業をお考えの方は、是非ご相談ください。
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