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神戸市灘区の行政書士谷垣征和です。
今回は、相続が発生したときに困らないように知っておきたい事がらについてのお話です。
民法882条は、「相続は、死亡によって開始する」と定めています。
相続について現実味を帯びて考えるのは、多くの場合、自分が相続人となったときです。自分が相続人になったとき、何をどうすればよいのかわからないという人がほとんどではないでしょうか。
ここでは、知っておくべき相続の基本的な事がらについてまとめてみたいと思います。
「相続人が数人あるときは、相続財産は、その共有に属する。」(民法第898条)
とあるように、相続人が複数いる場合に相続が開始されると、亡くなられた方の財産(相続財産)は、共同相続人間の共有財産となります。共有状態にあるため、各相続人は勝手に相続財産全体について処分することはできません。
融機関の預貯金の取り扱い
共有となるのは、銀行の預金等の金銭のように分割できるものも同じです。以前は、当然に分割され法定相続分については引き出すことが可能でしたが、2016年12月の生前贈与の取り扱いをめぐる判例によって、これまでの常識が覆る形となりました。現在は、法定相続分であっても各相続人が引き出すことはできません。
不動産の取り扱い
不動産に関しては、「共有」名義での登記は共同相続人の一人ですることができます。ただし、後で分割が行われて所有者が変わったときには、登記をやり直すことになりますので注意が必要です。
債務についての取り扱い
亡くなられた方に借金があったような場合には、その金銭債務については債権者に対する分割債務となるので、各相続人は法定相続分について、債務を負うことになります。遺産分割の折に違う割合を定めることもできます。
共有状態にある相続財産を、各相続人の相続分によって分割するのが、遺産分割です。
遺産分割は、遺言がある場合とない場合では取り扱い方が変わってきます。
「遺言」がある場合
まず、亡くなられた方の「遺言」がある場合には、遺言通りの内容によって相続が行われます。この場合の各相続人の相続割合指定相続分と言います。また、この場合、法定相続人以外の人に財産を譲る旨の遺言があった場合(「遺贈」と言い、相続とは区別されます。)も、その通りに財産が譲られます。ただし、遺言がある場合にも、つぎのことに注意が必要です。
■遺留分侵害額請求権
民法の定める法定相続人には、「遺留分」といって、「最低限これだけは受け取ることができる」という割合が決められています。いかに遺言ですべてを法定相続人以外の人に譲る旨の記載があったとしても、この遺留分を侵害する場合には、「遺留分侵害額請求」をすることによって、遺留分を金銭として請求することにより守ることができます。
ただし、兄弟・姉妹には、この遺留分はありませんので、この権利を主張することができません。
■遺産分割協議
遺留分を超えない内容の遺言であれば、遺言の内容通りの相続が行われますが、この場合でも、相続人全員(遺贈を受けた人がいれば、その人も)が参加して行われる「遺産分割協議」によって、相続人全員の同意があれば、遺言で指定された相続分以外の分け方で相続することもできます。ただし、一人でも話し合いの内容に同意しない、または参加しない人がいれば、遺産分割協議は成立しません。
「遺言」がない場合
民法は、「法定相続人」について定めており、相続人となる人の相続分を示しています。
相続人の種類は、大きく分けて「配偶者」と「血族」があります。
■「配偶者」
配偶者は、必ず相続人となります。
■「血族」
血族についてですが、これには順位があって、自分よりも順位の若い人がいた場合、その人は相続人になることはできません。
血族の順位
第2順位・・・親(親が亡くなっていれば祖父母。祖父母が亡くなっていれば、曾祖父母)
第3順位・・・兄弟・姉妹(兄弟・姉妹が亡くなっていれば、甥・姪)
(法定相続分の具体例)
配偶者と子の場合
配偶者・・・1/2、子・・・1/2(子の人数で等分します。)
※相続開始前に亡くなっている子がいる場合は、子の子(孫)が相続します(代襲相続)。
配偶者と親の場合
配偶者・・・2/3、親・・・1/3(2人いれば1/6ずつ)
配偶者と兄弟・姉妹の場合
配偶者・・・3/4、兄弟・姉妹・・・(人数で等分)
※亡くなっている兄弟・姉妹がいるときは、兄弟・姉妹の子が相続します(代襲相続)
配偶者がいない場合
配偶者がいなければ子、子がいなければ親、親もいなければ兄弟・姉妹が相続します。
この通り法定相続分は、一応決められていますが、必ずしもその通りにしなけらばならないものではなく、あくまでも目安です。法定相続分と違った相続分を遺産分割協議によって決めることができます。
- 養子も実子と同じ相続分。 〇
- 内縁の妻には、相続分はない。 ×
- 妻の連れ子には相続分はない。 × (養子縁組をしていれば、相続分はある。) 〇
- 胎児もすでに生まれた者とみなされ、生まれてきたときに相続する。 〇 (生まれなければ、相続しない) ×
- 離婚した元妻には、相続分はない。 ×
- 民法の定める「相続欠格」にあたる人には相続分はない × (民法891条) (人を殺害して相続分を得ようとしたり、遺言書を偽造・破棄などして利を得ようとした人など)
- 家庭裁判所より「廃除」にあたるとされた人には相続分はない ×
- 相続の放棄をした人には相続分はない ×
- 亡くなられた人に「特別の寄与」をした人は次のとおり △
特別の寄与者とは、法定相続人以外の親族で、無償で労務の提供をし、それによって亡くなられた人の財産の維持・増加に寄与した人です。相続人に対して特別寄与料の請求をし、認められるか、家庭裁判所に特別の寄与に関する処分の調停や審判を申し立てて認められた場合には特別寄与料を受け取ることができます。
民法では、相続人が亡くなられた人の「財産に属した一切の権利義務を承継する。」とされています。また、「ただし、被相続人の一身に専属したものは、この限りでない。」とされています。
では、具体的には、どのようなものが相続されるのでしょうか。
相続されるもの
■金融資産
銀行や郵便局の口座や貸金庫、有価証券、現金などです。
■不動産
土地や建物です。
■動産
車、貴金属類、絵画や美術品、骨とう品なども相続の対象となります。
その他、ゴルフの会員権、賃借権(借地や借家)、著作権なども相続の対象になります。
ここで大切なことが、相続されるのは決してプラスの財産だけではないということです。亡くなられた方が債務を抱えていた場合もすべて相続されます。連帯保証人になっていた場合も、その地位がそのまま相続されます。
相続されないもの
■生命保険金、死亡退職金、遺族年金
受取人や受給者の固有の財産となり、相続の対象とはなりません。(ただし、相続において特別受益として扱うこともあります。)
■祭祀財産
お墓や仏壇、祭具などは、相続の対象ではありません。祭祀を主宰すべき人に承継されます。
■一身専属権
その人が、その人であるがためにもつことのできる権利のことです。生活保護の受給者資格や損害賠償請求権、免許や資格などは、その人固有の事情で与えられているものなので、相続によって承継されません。
相続税について
相続税については、基本的には税理士の方に相談されることをお勧めします。私も相続の相談があったときには、税理士の方に依頼者をご紹介することにしています。
ここでは、ごく一般に言われる基本的な事項のみのお話にとどめますので、細かい部分については、きちんと税理士にご相談ください。
相続税の申告期限
相続税の申告期限は、「被相続人が死亡したことを知った日の翌日から10か月以内」となっています。申告・納税されない場合は、「無申告加算税」や「延滞税」の対象となります。
相続税の基礎控除
相続税は、超過累進課税なので相続額によってはまったくかからないことがあります。「相続人の取得した財産の課税価格を合計」したものから基礎控除額である「3,000万円+(600万円×法定相続人数)」を引いた額について課税されます。つまり、相続人が多ければ多いほど、基礎控除額は増え、それによって課税価格が減ることになります。
例えば、課税資産総額が1億円で、母、子2人が相続人であったとすると、
1億円-(3,000万円+(600万円×3人))=5,200万円が課税価格となります。実際の相続税は、これにそれぞれの法定相続分と税率をかけ合わせ、そこから控除額を差し引いたものをすべて合計してから、それぞれの相続分に分配して計算します。例えば子の一人であれば、
子一人の相続税額=5,200万円×1/4×15%(税率)ー50万円(控除額)
=145万円
となります。
この計算を母、子の2人についておこない、合計すると630万円となります。そして、例えば全員が法定相続分で相続するのであれば、子一人の相続税額は
630×1/4=157.5万円ということになります。
相続税の計算は、このようにそれほど難しいものではありませんが、課税資産総額と相続人の確定、またそれぞれの相続分がわからなければ計算できません。
いろいろな税額控除
配偶者の税額控除
さらに配偶者には、「配偶者の税額控除」があり、1億6,000万円または、法定相続分相当額までは非課税となり、この額以内なら相続税はかかりません。
未成年者控除と障害者控除
未成年者については、「20歳になるまでの年数1年につき10万円の控除」、障害者については障害の程度に応じて「85歳になるまでの年数1年につき、一般は10万円、特別は20万円の控除」があります。
配偶者への生前贈与
生前贈与のうち、贈与税の配偶者控除(最高2,000万円)の適用を受けた居住用不動産は贈与税も相続税も非課税となります。
非課税財産
遺産分割協議書で定めた負担割合での債務(住宅ローン、家賃・医療費等の未払金、買掛金、未納の公租公課(税金)、葬式費用、初七日等費用、香典、墓地・墓石、仏壇・仏具、心身障害者扶養共済制度給付金受給権、相続財産の国等への寄付財産等(営利法人等への寄付は課税対象)については、非課税となります。
ほかにも、控除の対象となる場合や例がありますので、専門家に尋ねることが肝心です。
被相続人の準確定申告
相続にあたって、ほかにも気をつけなくてはならないことはたくさんありますが、その中に被相続人の準確定申告があります。
被相続人が所得税の確定申告をしていた場合、被相続人が死亡した年の1月1日から死亡した日までの期間に所得が生じた場合、「相続の開始があったことを知った日の翌日」から4か月以内に相続人が申告しなければなりません。
まとめ
今回は、相続の基本的な部分について説明しました。
詳しくは、ほかの項も参考にしていただければと思います。
相続に関するご相談(遺産分割協議書作成、相続書類関係処理)は、当事務所まで。
当事務所では、税理士、司法書士、弁護士とも連携を取って、ワンストップで相続関連手続きを代理いたします。まずは、ご連絡ください。
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