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行政書士 谷垣事務所 代表 谷垣 征和
お気軽にご相談ください (078)855-4231(土日祝もお電話承っております。)
メールアドレスmail@office-tanigaki.com
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神戸市灘区の行政書士谷垣征和です。
今回は、配偶者居住権と配偶者短期居住権の違いのお話です。
配偶者居住権とは
被相続人(亡くなられた方)の配偶者が、相続が開始されたときに居住していた建物(被相続人所有)に終身または一定期間、無償で使用・収益できる権利です。
これは、夫婦で住み続けてきた家に、配偶者が亡くなった後も、継続して住み続けることができるようにすることで、残された配偶者の生活の安定を図る趣旨で定められたものです。この権利を取得することによって、遺産分割協議等により、配偶者が居住建物の所有権を取得しなかった場合でも、それまでどおり、住み続けることができます。
配偶者居住権が認められるには?
配偶者居住権が認められるには、次のような要件が必要です。
- 配偶者が、被相続人(亡くなられた方)所有の建物に相続開始のときに居住していたこと
- 遺産の分割により配偶者居住権を取得するとされたとき、または遺贈によって配偶者居住権を取得するとされたとき
- 対象となる居住建物に、被相続人(亡くなられた方)以外に共有者がいない場合(配偶者を除く)
上記1~3以外に家庭裁判所が次のような場合において、配偶者居住権を取得する旨を定めたとき
- 共同相続人間に、配偶者が配偶者居住権を取得することについて合意があったとき
- 配偶者が家庭裁判所に対して配偶者居住権を希望する旨を申し出たとき、所有者の不利益を考慮してもなお、配偶者の生活のためには必要であると判断したとき
いつまで権利があるの?
基本的には、配偶者の終身の間です。ただし、次のような例外があります。
- 遺産分割協議において別段の定めがあるとき
- 遺言によって別段の指定があるとき
- 家庭裁判所が遺産分割の審判をしたときにおいて、別段の定めをしたとき
以上のような場合には、その定めに従うことになります。
具体的にはどうなるの?
配偶者居住権を取得した場合、配偶者には次のようなことが認められます。
- 居住建物の所有者に対し、配偶者居住権の登記を請求できる。
- 居住建物の使用・収益に必要な修繕をすることができる。
- 通常の必要費以外の費用を所有者に対して請求できる。
(3について)
・固定資産税は通常の必要費に入りますので、配偶者が支払うことになります。
・リフォーム等の修繕費は、必要費以外の費用なので、所有者が支払うことになります。
配偶者居住権の取得による、配偶者が守るべきことについては、次のようなものがあります。
- 配偶者は、居住用建物について、善良な管理者の注意をもって使用・収益しなければなりません。
- 配偶者は、所有者の承諾を得なければ、居住用建物を改築もしくは増築または第三者に使用・収益させることはできません。これについて、所有者が相当の期間を定めてやめるよう勧告したにもかかわらず、従わない場合は、配偶者居住権を消滅させることができます。
- 何らかの理由によって、居住用建物を所有者に返還するときは、相続開始後に生じた損傷などについて、原状回復をしなければなりません。また、配偶者居住権は、誰かに譲渡することはできません。
配偶者居住権が失われる事由
配偶者居住権は、次のような場合には消滅する、つまり居住用建物に住む権利が失われることになります。
- 使用期間が定まっている場合において、その使用期間が満了したとき
- 配偶者の死亡
- 住建物のすべてが滅失したとき
- 居住建物が配偶者の所有となったとき(配偶者のほかに共有者がいるときを除く)
- 配偶者が配偶者居住権を放棄したとき
- 配偶者が、管理義務に背いた等の理由で、所有者が相当期間を定めて改善を要求したにもかかわらず従わない場合
配偶者短期居住権とは
配偶者短期居住権とは、被相続人(亡くなられた方)が、相続が開始されたときに居住していた建物に遺産分割が終了するまで等の短期間、無償でその建物を使用できる権利です。
配偶者の死亡により、残された夫婦の一方が一定の期間生活を維持できるよう定められたものです。
配偶者短期居住権が認められるには?
被相続人(亡くなられた方)所有の建物に、相続が開始したときに無償で居住していた場合に配偶者短期居住権が認められます。
ただし、以下の場合には、例外的に認められません。
- 配偶者に配偶者居住権が認められたとき
- 配偶者が、相続人の欠格事由・廃除によって相続人の権利を失ったとき、または配偶者が相続の放棄をしたとき
- 被相続人(亡くなられた方)の遺言によって、配偶者の相続分をゼロと指定されたとき
配偶者短期居住権の権利はいつまであるの?
配偶者短期居住権は、次のどちらかの理由によって終了します。
- 相続人で遺産分割協議をしなけらばいけない場合で、その遺産分割協議によって、居住建物の所者となる人が決まった日から6か月か、相続が開始したときから6か月のどちらか遅い日
- 1以外の場合(配偶者の相続放棄含む)で、居住建物の所有者が決まった場合、その所有者から配偶者短期居住権の消滅について申し入れがあったときから6か月経った日
配偶者居住権との違い
配偶者の一方が亡くなった後も、それまで住んでいた家に継続して住むことができるという意味では、配偶者居住権も、配偶者短期居住権も同じ権利のように思います。「短期」と付いているので、こちらの方が短いのはその通りなのですが、それ以外にも違いはあるのでしょうか。
配偶者居住権は、認められれば基本的に「終身」住むことのできる権利でした(例外は、あります)。しかし、認められるには一定の要件をクリアしなければならず、権利が認められなければ、住んでいた家を明け渡さなければならないことになります。
それに対し、配偶者短期居住権は、「当然に」認められる権利であり、相続人の欠格事項にあたらないこと等一定の例外はあるものの、そうでなければ6か月間は確実に住む権利が得られるというところが大きな違いです。6か月という短い期間ですが、住んでいた家を直ちに奪われることのないよう、残された配偶者の一方に絶対的に認められた権利という意味合いが、色濃く表れていると言えます。
それ以外にも、定められた趣旨から、配偶者短期居住権には、配偶者居住権に比べて次のような違いがあります。
- 登記ができない。
- 配偶者は居住建物について収益権がない。
- 配偶者が管理義務に背いた場合や所有者の承諾を得ずに第三者に使用させた場合に建物所有者は相当期間を定めることなく配偶者居住権を消滅させることができる。
まとめ
配偶者居住権も配偶者短期居住権も、それまで住んでいた家を出ていかざるを得ないような事態を避けるために定められた規定です。相続が開始されたときには、こうした権利を使うことはもちろんですが、居住建物の所有者となる相続人やその他の相続人も、権利の行使を妨げるようなことにならないよう、こうした規定が定められた趣旨を十分に理解することが大切です。
当事務所では、相続の手続きについて、お手伝いをさせていただきます。
お困りのときは、是非ご連絡ください。
その他、相続についてはこちらの記事も参考にしてください。
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