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法定後見制度には、次の3つの類型があります。成年後見、補佐、補助の3つです。
どの類型に該当するのかは、裁判所が決定します。裁判所の判断の基準は、本人の判断力の低下の度合いです。そして、それぞれの類型ごとに後見人のできること、できないことが決められています。
後見人等に与えられる権限としては、次の3つがあります。
代理権は、法律行為(契約を結ぶなど)を本人の代わりにすることができる権限です。
成年後見の類型では、この代理権が自動的に後見人に与えられます。後見人は、本人の預金の管理、不動産の売買、賃貸契約などについて代わりに行うことができます。この代理権の目的は、本人の財産を守ることにあります。それに対して、結婚や子の認知などは身分行為といわれ、当然といえば当然のことですが、こうした行為には後見人に代理権はありません。身分行為は本人の意思に基づかなければならないため、代理権は与えられていないのです。
一方、保佐人や補助人の場合は、当然にはこの代理権は与えられません。代理権が必要と思われる行為について裁判所に申し立てることにより、裁判所が必要と認めるものについて与えられます。また、この場合でも、本人の同意が必要になります。保佐人や補助人がいくら代理権が必要と感じても、本人の了承がなければ代理権は与えられません。
取消権は、本人の行った法律行為を取り消すことができる権利です。
「成年後見」については、日用品の購入その他日常生活に関する行為以外の法律行為について、後見人に取消権が与えられます。つまり、本人が行った行為について、後見人が本人のためにならないと判断したことは、取消権を行使することで取り消すことができるのです。ただしこの場合でも、日常生活に関する行為(日常生活に必要な物品の購入など)については、取り消すことができません。
類型の一つの「保佐」については、本人の判断力を尊重する意図から、この取消権は限定的となります。保佐人には当然に取消権が与えられているわけではなく、家庭裁判所に申し立てを行うことで、民法13条1項に定められた重要な法律行為についてのみ、取消権が与えられます。それ以外の本人が行った法律行為については、保佐人は取り消すことができません。
「補助」の類型については、さらにこの取消権を与えられる範囲は狭くなります。家庭裁判所に申し立てることによって、重要な法律行為のうち、家庭裁判所が必要と定めたものについてのみ補助人に取消権が与えられます。この場合もやはり、本人の同意が必要です。
同意権は、本人が行った行為に同意することで、本人の行為が法的に認められることになるというものです。逆に言えば、同意を得ずに本人が行った行為については、取消権で取消すことができることになります。
ところで、「成年後見」に関しては、後見人にこの同意権はありません。本人に同意を与えたとしても、その通りの行為ができる保証はなく、その場合本人にとって不利な事態を招く恐れがあるため、そもそも成年後見人が本人に同意をすることを認めていません。
「保佐」に関しては、取消権と同様に民法13条に定められている重要な法律行為についてのみ保佐人に同意権が与えられます。この重要な法律行為を本人が、保佐人の同意を得ないでした場合には、取消権が認められます。
「補助」に関しては、当然に同意権は与えられていません。申し立てをすることで、民法13条に定められている重要な法律行為のうち裁判所が認めた法律行為のみ補助人に同意権が与えられます。また、この補助人に同意権が与えられるには、本人の同意が必要となります。
代理権 | 取消権 | 同意権 | |
成年後見 | 〇 | 〇(日用品購入以外) | × |
補佐 | △(本人の同意が必要、申立てにより家庭裁判所が必要と定めたもの) | △(重要な法律行為のみ) | △(重要な法律行為のみ) |
補助 | △(本人の同意が必要、申立てにより家庭裁判所が必要と定めたもの) | △(本人の同意必要、申立てにより、家庭裁判所が必要と定めたもの) | △(本人の同意必要、申立てにより、家庭裁判所が必要と定めたもの) |
3つの類型について、本人の同意が必要な場合をまとめると、次のようになります。
代理権・・保佐人、補助人に付与する場合
取消権、同意権・・・補助人に付与する場合
また、そもそもの話になりますが、補助開始の審判については、本人以外の申し出の場合、本人の同意が必要です。
このように細かい取り決めがあるのも、その類型ごとに最大限本人の意思をくみ取ったうえで、できるだけ自分の意思で生活し、その人らしい生き方を追求できるようにするための制度であることがわかります。
あくまでも、そのサポートをするのが成年後見制度なのです。
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